ハイブリッドシステムの種類



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プラントモデル

公開日:2020/10/24         

前提知識
 ・交流電流
 ・DC-AC変換 , DC-DC変換 , AC-DC変換
 ・バッテリー容量


■ハイブリッド車の基本システム
ハイブリッド車とはエンジンとモーターを動力に持つ自動車のことですが、ハイブリッドシステムには様々な種類がありますので説明します。 まずはどのハイブリッドシステムにも共通する部品や考え方について説明します。以下は後述するシリーズ式のハイブリッドシステムですがこれを例に説明します。



① モーター
モーターを作動させるには数百Vの交流電流(三相交流)が必要になります。電力の供給源はリチウムイオンバッテリーやエンジンを動力としたジェネレータからとなります。 ただしモーターの作動電圧にあわせるため、インバータによって昇圧された後モーターに供給されます。

② ジェネレータ
エンジンを動力として電力を生成します。主に発電用に使用しているのでジェネレータと呼んでいますが、構造はモータと同じものになります。 エンジン始動時はトルクを生成します。

③ インバータ
一般的にインバータといえばDC-AC変換器となりますが、この世界ではDC-DC変換AC-DC変換も併せて一体のモジュールとしたものをインバータと呼びます。 バッテリーからの直流電流をモーターに供給するため交流にしたり (DC-AC)、ジェネレータからの交流電流をバッテリーに供給するため直流に変換したり(AC-DC)、 リチウムイオンバッテリーの直流電流を鉛バッテリーに供給するために直流に降圧したりします(DC-DC)。

④ バッテリー
ハイブリッド車や電気自動車にはリチウムイオンバッテリーしかないと思うかもしれませんが、12Vの鉛バッテリーも使われます。 それは自動車に使われる電装品(メーターやセンサー類など)は従来のエンジン車の部品を使用している場合があるため、12Vで供給するための電源が必要になるからです。 リチウムイオンバッテリーは数百Vなので、降圧してから鉛バッテリーに供給します。

⑤ エンジン
システムによって駆動用や発電用など用途が変わります。最近はICE(Internal Combustion Engine)と呼んだりします。

■ハイブリッド車の分類
ハイブリッドシステムはいくつかの切り口で分類する事ができます。

<切り口①:モーターとエンジンの駆動軸に対する位置関係>
モーターとエンジンの駆動軸に対する位置関係を考えた時に、ハイブリッドの方式は大きく3つあります。

<シリーズ式>
シリーズ式とは、モーターのみで車両を駆動する方式で、エンジンはモータを動かすための発電用になります。 動力を伝えるインターフェイスはモーターのみで、駆動軸から見たらエンジンとモーターはシリーズ(直列)になっている事からシリーズ式といいます。

モーターを動かすためにエンジンが発電しているなら、直接エンジンが動力を駆動軸に伝えた方が効率が良いのでは良いと思いますが、 エンジンは発進時や加速時などの過渡の状態では効率が悪いので、電力への変換ロスを考慮してでもモーターで駆動した方が効率が良いです。 ただし、車速が高くて定常運転の時はエンジンの方が効率が良いので、そこはシリーズ式のデメリットになります。

 

なおレンジエクステンダーもシリーズ式となります。レンジエクステンダーとは、バッテリーのエネルギーだけでは不足する航続距離をエンジンの発電によって延ばすシステムで、 アメリカ当局の定義によると以下となり、これをクリアすると電気自動車の一部として扱われ、税制面の優遇などを受ける事ができます。

①充電による走行距離が75mile(121km)以上
②発電専用のエンジンによって発生した電力での走行距離が、充電による走行距離を下回ること
③バッテリー電力が低くなるまで、エンジンは作動してはならない

<シリーズ・パラレル式(スプリット式)>
シリーズ・パラレル式とは、モーターとエンジンの両方を使って車両を駆動する方式で、モーターとエンジンの効率の良い所を使い分けます。 シリーズ式とパラレル式の両方の特徴を持っていることから、このように呼ばれます。トヨタが主に採用している方式で、構造が複雑になりますが効率の面では優位になります。

 

<パラレル式>
パラレル式とは、モーターとエンジンの両方が同時に駆動軸に動力を伝える事ができます。そのことからパラレル(並列)式といいます。 ただしモーターの出力はそれほど高くなく、エンジンが主体となって車両を駆動します。モーターはエンジンの効率の悪い所をアシストするという位置づけです。 ただし定常走行など一部の領域に限定したらモーターだけでも走行できるものもあります。またモーターが発電している時はモーター駆動はできません。(逆もしかり)

他の二つの方式に比べて安く実現する事ができるのが大きなメリットになります。

 

<切り口②:モーターの駆動軸に対する位置>
切り口①は主にエンジンとの位置関係を表しておりましたが、こちらはエンジンとの位置関係だけに留まらず、駆動軸についているモーターの位置を表しており、それぞれP0-P5ハイブリッドシステムといいます。



<切り口③:モーターの動力としての寄与度>
モーターがエンジンに対して車両の駆動にどれだけ多く関与しているか(解りやすくいうとモーターの大きさ)を考えた時に、ストロングハイブリッド、マイルドハイブリッド、マイクロハイブリッドという分類ができます。 ストロングハイブリッドはモーターによる自走が可能、マイルドハイブリッドはモーターは走行中のエンジンのアシストまで、マイクロハイブリッドはアイドルストップからの始動時のアシストまでです。



<プラグインハイブリッドとは>
プラグインハイブリッドとは、家庭用コンセント(プラグ)などからバッテリーに充電が可能なものをいいます。電気自動車はコンセントから充電できることが必須なので、あえてプラグイン電気自動車などとは呼びません。 どのシステムにおいてもプラグインの機能が実装される訳ではなく、バッテリー容量が小さいシステムには実装されません。それはバッテリーに充電してもすぐ容量が満タンになるので、その機能をつけるメリットが小さいからです。 したがい、マイルドハイブリッドやマイクロハイブリッドには実装されません。

■まとめ
まとめると以下の様になります。











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