リチウムイオン電池の仕組み



化学

公開日:2021/1/1         

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前提知識、関連情報
 ・鉛電池
 ・標準電極電位
 ・アレニウスの式
 ・分極


■リチウムイオン電池とは

リチウムイオン電池(LIB)は以下の構成になっており、プロピレンカーボネート(PC)等の溶媒にLiPF6等のリチウム塩が溶解した電解液を使用。 負極の活物質にLiC6(Liがグラファイトに覆われたもの)、集電体にCu。正極の活物質にCoO2、集電体にAlの電極が浸っております。 セパレータは正極と負極の短絡による発火を防ぐ役割を持っている絶縁体です。Liを通すことが可能な穴が空いています。



<LFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)とは>

LFP電池とは、正極材料にリン(P)・鉄(Fe)・リチウム(Li)を用いたリチウムイオン電池のこと。従来のリチウムイオン電池に対して、レアメタルであるコバルトを使わないため安価で、安全性が高く(本体に異物が刺さってもショートしにくい)、劣化しにくい特徴を持っているため、非常に注目されている電池です。

■リチウムイオン電池の基本原理

<放電>
① 負極のLiがLi+となり電解液に溶け出します。② Liから離れた電子は外部回路を通り正極に移動し、同時にLiはセパレータを超えて負極に移動します。③正極で電子とLi+がCoO2に付着します。

負極にとっては電子を失うので酸化反応、正極にとっては電子を得るので還元反応となります。(参照:酸化還元反応)



<充電>
以下の様に外部電源を繋ぐと上記の説明とは逆の反応が起き、電子が負極側に流れます。これを充電といいます(逆の現象を放電という)。ボルタ電池, ダニエル電池は充電はできず1次電池といいますが、鉛電池やリチウムイオン電池の様に充電可能な電池を2次電池といいます。



<起電力>
起電力はLiC6とLiCoO2標準電極電位から求める事ができます。LiC6は-2.9V、LiCoO2は0.9Vなので両者の差分の3.8Vが起電力となります。

■充放電特性

<温度による影響>
バッテリーの温度が低いと分子の動きが鈍くなり反応が起きにくくなるため、出力電圧は低くなります。温度が低くなり過ぎると(0℃以下)、負極でLiがグラファイト内に取り込めずLiが単独で結晶化してしまう為、バッテリー性能の低下を引き起こします。

バッテリー温度が高くなると分子の動きが活発になり、出力電圧は高くなります。しかし温度が高くなりすぎると(45℃以上)、後で説明しますが劣化が促進されます。

以下はバッテリーの放電特性と、充電する際の電流電圧のコントロール例となります。この充電方法は定電流定電圧(CCCV:Constant Current-Constant Voltage)といい、 効率よく充電するために初期はたくさん電流を与え、充電が進むに従い電流を落とします。電圧を一定にしても電流が下がるという事は分極が進んでいることを意味しており、その状態で電流を多く流すと温度が上昇し、劣化や火災が発生しますので、それを防ぐようにしております。



<過充電、過放電による影響>
過充電すると、負極でLiがグラファイト内に取り込めずLiが単独で結晶化していきます。過充電し続けるとLiの結晶が成長して(デンドライトという)いき、セパレータを突き破り正極に到達し、ショートして(デンドライトショート)発火に至ります。

過放電すると負極のLiが欠乏し負極の集電体のCuが分解されて、充電したとしてもLiを保てない状態になります。

■バッテリー発熱の要因

バッテリーを充放電させる際に発生する熱の要因は、主にエントロピー発熱と分極発熱があります。

<分極発熱>
分極発熱とは、分極によって電池の内部抵抗の増加による熱損失分の発熱の事をいいます。内部抵抗の変動要因には、温度とバッテリー容量(SOC)があります。 放電すると内部抵抗分だけ発熱しますが、発熱すると内部抵抗は小さくなるのでその分発熱量は抑えられます。また充電時はSOCが高くなるに従い内部抵抗は増加しますが、放電時はSOCが低くなるに従い内部抵抗は増加します。

<エントロピー発熱>
充放電時の化学反応時に発生する熱量です。放電時は発熱反応で、充電時は吸熱反応になります。反応量が多い程、熱量は多くなります。充電時は分極発熱があるものの、吸熱反応分は温度の上昇を抑える事ができます。

■劣化の原因

劣化には以下の様な形態があります。

<保存劣化>
① 満充電状態など充電量が多い状態で長期間保存すると、負極のLiが酸化する事によって活性Liイオンの総量が減少します。 充電量が少ないとLiは正極に多くある状態となりますが、それは問題ないです。なぜなら負極にあるLiはグラファイトに覆われているだけでLi単体で存在しているため、 化学反応(酸化)が発生しやすいですが、正極にあるLiは化合物となっているので負極にあるLiに比べ化学反応しにくい構造となっているからです。

また高温な状態での保存も酸化反応が促進されるので良くありません。温度に対する劣化の特性はアレニウスの式によって表すことができ、10℃温度が上昇すると劣化速度が2倍になると言われています。

② 過放電状態の保存も上記で説明したとおり、負極のCuが分解されるので劣化の要因となります。

以上を踏まえ、劣化を抑制する保存方法は、充電量を低くした状態(容量30%程度)で、冷蔵庫など低温の場所(低すぎると氷結し構造が破壊されるのでNG)で保存するのが良いです。

<サイクル劣化>
充放電を繰り返し使用する事で、以下の様な現象によってLiイオンが減少したり、交換が妨げられる状態のことをいいます。
 ① Liイオンが負極で電子を受け還元され、電解液に溶け出し、活性Liイオンの総量が減少する。
 ② 負極表面に電解液が反応した皮膜(SEI:Solid Electrolyte Interphase)が厚くなりLiイオンが通りにくくなる。

劣化特性を表す際に用いられる経験則のことをルート則といい、バッテリ容量は充放電サイクル数のルート(平方根)に比例するというものです。











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