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前提知識
・カルマンフィルタとは
・分散、共分散
・最小二乗法
・ベイズ推定
カルマンフィルタの適用事例をこちらで説明しましたが、ここでは以下カルマンゲインの式の導出方法を説明します。

■カルマンゲインの導出の考え方
カルマンゲインは真値に対する推定値の誤差を最も小さくする為のもので、
それは平均二乗誤差を最も小さくすれば良い事になります。すなわち、最小平均二乗誤差(MMSE:minimum mean square error)を求めるのが
カルマンゲイン導出を意味します。

上記①の部分は分散(共分散)Pkとなります。従って最小平均二乗誤差は分散(共分散)を最も小さくすれば良いことになります。
またPkは行列で表現しますので、以下となります。

ここで転置行列を掛けている意味合いについて説明します。誤差が行列で表現できるとして、実際に計算してみます。

この結果を見てみると、対角成分は各誤差の二乗になっており分散値を示しており、対角成分以外の値は共分散になっています。
このような行列を分散共分散行列といいます。そして対角成分の和(トレース)は残差平方和になっており、
残差平方和の最小値が平均二乗誤差を最小にした形と等しくなります。これは最小二乗法の考えとなっており、残差平方和の最小値は微分値が0になる点となります。

■カルマンゲインの導出
先ほど説明したとおり、カルマンゲインの導出には以下誤差の分散(共分散)Pkを求めます。

COVとは共分散(covariance)を意味します。また、Pやxの右下にk|kというものが付いておりますが、これは条件付き確率を意味し、
kという条件が発生したもとで、Pkが発生するという意味となります。この場合はどちらもkなのであまり意味を成しませんが、Pk|k-1となると、
k-1という前回値の後のPkの値という形になります。
(7)式に(2)式を代入すると、

ここでyを下線部の様に変形する。

ここで、wはxとは独立であるため、

次に以下公式を用いてトレースの微分を行うと、
トレースの微分の公式

上記より、

次に以下転置行列の公式を使って式変形すると、
転置の公式

②は分散共分散行列なので対称行列となりますので、上記公式が使えます。従って、

以上でカルマンゲインを求めることが出来ました。
■分散の更新
今回の分散値、カルマンゲイン、推定値が求まった次のゲインと分散は、今回のそれら情報をもとに更新していきます。
これはベイズ推定の考え方に従っております。
※ベイズ推定とは
推定値を決定する情報が随時アップデートされる場合において、推定値をそれに合わせて更新していき推定の精度を高めるというもの。
条件付き確率の応用形。
ベイズ推定による分散更新フロー
以下の様になっております。

① 分散/共分散の事前推定

より、

また、(6)式に(9)式を代入すると、

② 分散/共分散の事後推定
(8)式を(7)に代入すると以下になります。詳細は割愛。

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