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車のバッテリーや電線を触った時の感電の原理を説明します。
■電流が流れる仕組み
まず電流が流れる仕組みについて考えます。例えば以下の場合、電球に電流はが流れるでしょうか。

上記はバッテリー端子のプラスとマイナスが繋がれていないので電流が流れないのは解ると思います。では以下左図の様にプラス側の終端を地面に接地(アース)した場合はどうでしょうか。
この場合も電流は流れません。以下右図は、電流が流れる事を意味した回路図となっていますが、実際にはプラスとマイナスが繋がっており左図とは異なった状態です。

以下の様にマイナス端子側も地面に設置させた場合は、地面が導体となってプラス側とマイナス側が繋がるので電流が流れます。
つまり、電流が流れるためには回路が閉回路になっている必要があります。なお地面に設置させて電流を流す場合は乾電池ほどの電圧では電流が流れません。

■電線で感電する場合
電線に止まった鳥は感電することは有りませんが、それは以下の様に鳥より電線の方が抵抗が低く、電線の方に電流が流れるためです。

しかし、マイナス側の電線も同時に触ったり、釣り竿が電線に引っかかったら感電するという話をよく聞きますが、それは何故なのでしょうか。
人間だとしても抵抗は数千Ωあるので、上記と同様電流が流れないと思うかもしれませんが、以下の様に並列回路となるので、地面をとおして電気が流れ感電してしまいます。

<地面に流れた電流の行方>
先ほど地面に流れた電流は再び電線に戻っていくと説明しましたが、電流はどうやって電線のアースの場所が解るのでしょうか。
電流は電子のやり取りなので、地面に与えた電子の総量と電線が受け取る電子の総量が等しくなっていればよく、実際に与えた電子そのものを電線は受け取っている訳ではありません。
<電線のアースが無ければ感電しない>
仮に以下の様に電線側にアース線がなければ、閉回路ができないので感電することは有りません。ただ実際にはアース線が無いことはあり得ません。

■自動車のバッテリーで感電する場合 (12V鉛バッテリー)
自動車にある12Vの鉛バッテリーはボディにアースしています (その方がハーネスのコストがかからない)。その状態でプラス端子に触った場合、閉回路ができていませんので、人体には電流が流れません。

片方の手でプラス端子、もう片方の手でボディに触ると閉回路ができあがるので電流が流れます。ではどれくらいの電流が流れるのか計算します。人体の抵抗値は乾いている時で約4000Ω、濡れている時で約400Ωとして計算します (条件によってばらつきます)。
次に、人体に流れる電流と人体への影響の関係は以下です。
1mA:ピリッと感じる程度
5mA:痛いと感じる
10mA:我慢できない程の痛み
20mA:筋肉がけいれん、硬直して動けない。
50mA:非常に危険な状態、短時間でも流れ続けたら死亡に至る
100mA:即死レベル
以上を踏まえて、流れる電流はオームの法則より、

となり、乾いている時は痛いと感じるレベルですが、濡れている時は非常に危ない状態となるので、くれぐれも濡れた手では触らない事です。
<バッテリーを取り外す時はマイナス端子から外す>
バッテリーを取り外すときは、マイナス端子側から外して閉回路を作らない様にすれば感電する事は有りません。
仮にプラス側から外した場合、誤って工具がプラス端子とボディ側に接触してしまった場合、閉回路ができあがり大電流が流れてしまいます。

<バッテリーブースターを行う場合はプラス端子から取り付ける>
バッテリーが上がった車を復旧させる場合の繋ぎ方は以下のとおり。上記と同じ理由で、マイナス端子から外すという事は、プラス端子から取り付けることに等しいです。
① 赤いケーブルを繋ぐ:上がったバッテリーのプラス端子→正常なバッテリーのプラス端子の順
② 黒いケーブルを繋ぐ:正常なバッテリーのマイナス端子→上がったバッテリーのマイナス端子の順
■自動車のバッテリーで感電する場合 (リチウムイオンバッテリー)
電気自動車などに使用しているリチウムイオンバッテリーは鉛バッテリーよりも高電圧(ex:200V)で、モーターに電流を供給する場合はそこから昇圧させており、更に高電圧(ex:500V)になっており、
人体に電流が流れると100mA以上の即死レベルの電流が流れます。
そのため、車の構造としても鉛バッテリーよりも厳重に取り扱っており、鉛バッテリーと異なり回路をボディアースをしていないので、回路とボディを同時に触れても感電しません。
ただし漏電が発生している場合には感電の危険があります。

実際には、漏電対策としてさまざまな措置が講じられています。先ず回路には絶縁カバーが施されており、活電部には容易に触れられないようになっています。
さらに回路全体を筐体で覆うことで、回路に直接触れることができない構造としています。
それでも万が一漏電が発生した場合に備えて、筐体をボディアースし、筐体と車体(ボディ)を同電位に保つことで、人体に電流が流れるリスクを極力抑える設計となっています。

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